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GLOBAL INVESTMENT ACADEMY GIA通信 Vol.380
正常化しつつある原油相場に地政学的リスクが襲う!?
みなさま、こんにちは!
Global Investment Academyの両角です。


今週からようやくプロ野球が始まりました。まだ無観客試合とするなど、ノーマルな状態ではないですが、何かと暗い話題が多い中で、スポーツ界から少しでも明るい話題を届けて欲しいものですね!


今週のGIA通信では、世界経済の源、原油の最近の動きを取り上げてみました。5月には一時的に1バーレルあたりマイナス39ドルになるなど、かつてない状態に陥りましたが、先進国を中心に経済が再開に向けて動き出した中で、原油もノーマルな状態に戻りつつあるようです。


地政学的リスクもくすぶる中、原油価格はどう動いていくのか、また新興国の中で影響が大きいのはどこなのか、みなさんも一緒に考えてみてください^^
右肩あがりに上昇を続ける原油価格
それを支える改善された需給バランス
4月5日配信の、GIA通信 -vol.369-「予想的中!?原油価格がジワジワと上昇中!」でもお伝えしていた通り、原油価格が徐々に正常なマーケットレベルにまで戻してきました^^
(ニッセイアセットマネジメント「マーケットレポート」から引用)


EIA(米国エネルギー情報局)が6月9日に発表した内容によると、今年6月と7月の原油需要見通しを上方修正するとともに、供給見通しを下方修正した結果、需給バランスがタイトになることが予想されることが期待されての値動きのようですね。


需要サイドは従前の想定よりも各国での経済活動の再開が早いこと、そして供給サイドとしては、OPECプラスの協調減産の効果を再評価したことなどが影響しているようです。


確かにOPECプラスの中で、約束を守れなかった国、例えばイラクは、もともと日量100万バレル余りの減産を約束していたにも関わらず、5月は目標を57万3000バレル下回ったために、これを埋め合わせるため、7月に日量5万7000バレル、8月と9月に日量25万8000バレルずつ割り当てに上乗せすることで合意したというから、各国とも本気モードになっているのは間違いありません。


このレポートでは、OPECプラスとしては、シェア争い(=覇権争い)を続けるより協調減産した方が経済合理性が高いことを再認識した、と結論づけています。例えば、減産せずに20米ドル/バーレルの価格をキープするよりも、生産量を2割減らして40米ドル/バーレルにあげた方が収益が大きいということ、です。


まぁ、少し考えれば誰でもわかりそうな事ですが、、、、汗 あの時はあの時で、どうしても彼ら産油国にとって、ここ数年シェアを奪われ続けてきた米国が憎くて憎くて仕方なかったのでしょうし、何としてでもシェールオイル企業をぶっ潰すんだ!的な決意・覚悟が強かったようにも見て取れます。


世界最大の産油国である米国のシェールオイルの採算ラインは、1バレル 40〜50ドル程度と言われており、足元の低い原油価格では採算が取れなくなるため、多くのリグが稼働を止めざるを得ませんでした。


実際に、今回3月下旬以降の原油価格の暴落によって、米国内で稼働する掘削リグ(地下に眠る石油・天然ガス採取用の井戸を掘る装置)が一気に減少していることがわかりますし、油田サービス大手ベーカー・ヒューズによると、米国内の掘削リグの稼働数は、1991年までさかのぼれるデータで過去最低となっている情報もあり、原油価格の下支えの一つの理由になっているということは間違いなさそうです。 (ニッセイアセットマネジメント「マーケットレポート」から引用)
タンクが溢れて▲価格は二度とない!
需給バランスが通常に戻りつつある・・・
繰り返しになりますが、足元原油価格が上昇しているのは、原油マーケット全体の需給バランスが以前よりもタイト(=引き締まった)になりつつあることが要因です。


米国のエネルギー企業による自動車用ガソリン供給は、ドライバー需要が目安となりますが、政府統計によると、5月8日までの3週間でガソリン需要は40%近く増加し、トラックや列車、ボートなどで広く使われるディーゼルを含めた留出油の需要も増えているようです。ただ一方で、世界的な移動制限が続いている中で、ジェット機燃料の消費はかなり弱く、明暗が分かれています。


こうした供給減+需要増を反映して、世界の貯蔵拠点で在庫が減少。中国の原油在庫は減少し始め、米原油在庫も5月8日終了週に1月以来の減少に転じました。先の史上初のマイナス価格になった原因とされた米国の主要貯蔵拠点であるオクラホマ州クッシングでも減少し、原油市場での在庫危機の最悪期は過ぎたとの観測が強まっています。
そのような環境を反映して、ヘッジファンドなど投機筋は長期の回復を見越したポジションを形成しており、米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、米原油先物の買い越しは2018年9月以来の高水準に達した模様ですが、果たしてどうなることやら。。


ちなみに下は原油先物市場であるWTIの2021年5月までの向こう一年の価格推移ですが、コンタンゴ(=順鞘:期先の限月の価格が高く、期中、期近と受渡し期日までに残された期間が短くなるほど価格が安い状態)ではあるものの、それほどカーブが高くなっていないことをみると、ここ数週間で見たような価格上昇は、今後はあまり期待できないようにも見て取れます。
何やら世界中でザワザワ感も・・・・
至る所で地政学的リスクの高まりが!?
地政学的リスクの高まりも、原油価格の上昇の要因の一つになっています。


今週火曜に、北朝鮮の古都・開城市にある南北共同連絡事務所を爆破し、世界中を驚かせました。爆破された連絡事務所は2018年に3回にわたって行われた南北首脳会談の合意によって設置された建物で、いわば、南北融和の象徴的な存在だったにもかかららず、です。


時同じくして、インドと中国という核保有国でもある2つの大国は、国境を争っているヒマラヤ山脈地帯で両国軍が衝突し、インド兵が少なくとも20人死亡した模様。両国軍の衝突で死者が出たのは、衝突が始まった1962年以降初めてとのことで、こちらも緊張が高まっている模様。


また、あまり知られていませんが、米軍は原子力空母3隻を太平洋地域に同時配備し、台湾周辺や南シナ海で活発に活動する中国軍を牽制する動きを強めています。3隻同時配備は2017年11月以来で極めて異例のこととして、海の上でも米中間のにらみ合いが続いているらしい・・・


さらには、内戦状態にあるリビアでは、暫定政府を軍事支援しているトルコを、リビア国民軍の後ろ盾でもあるフランスがけしからんと言って、場外戦で揉めています。リビアは産油国ですので、世界の大国がよだれを流しながら虎視眈々とその油の利権を狙っている、そんな構図が容易に想像できます。
少し振り返ってみても、昨年6月には、中東ホルムズ海峡におけるタンカー攻撃事件や、イランによる米国の無人偵察機(ドローン)撃墜事件があり、中東からの原油供給が減少するのではないかという懸念が強まって、国際商品市場において原油価格が上昇しました。


また下半期以降でも、イラクにおける米軍、親イラン派武装勢力双方の拠点に対する攻撃が増加傾向にあり、ど年末の12月31日には在イラク米大使館に対するデモ隊の襲撃、さらには年が明けてすぐの1月3日には、ラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害、そしてそれに対するイランの報復(イラク駐留米軍基地への攻撃)などが続き、緊張がエスカレートしたことは記憶に新しいかと。


イランもイラクを含めた中東の産油国においても、新型コロナの感染者数拡大が続いており、まずはその対応に追われているところですが、一旦収束の目処がつけば、またいつ何時、何か仕掛けてくる可能性は否定できません。地政学的リスクが高まれば、市場も反応して原油価格が上昇し、結果的に産油国の財政が潤うから、当然の事といえば当然かもしれません。
原油価格上昇に困る新興諸国
コロナショックに加えてダブルパンチ?
ただ一方で、この原油高が続くことで、困る国があるのも事実。それは原油を輸入に依存している新興国諸国です。


新興市場は、ここ数年続いてきた米ドル高による債務負担の増加と米中貿易戦争の影響、さらには国内の社会的・経済的混乱などで揺れ動いてきました。自国通貨が売られる中、資本流出を防ぐためにも本来は利上げしたいところでありますが、米国を中心に世界的に利下げ基調が進行してることでさらにイールドギャップが開き、より一層資本流失してしまうのでそれはできない。


そんな環境下で原油価格が上昇すれば、国内の物価が上がり、人々の消費意欲も抑えられ、景気がより悪化する、まさに負のスパイラルに入りつつあります。


BNPパリバ・アセット・マネジメントの調査によれば、フィリピン、トルコ、南アフリカ、インド、インドネシアなどは、国内総生産(GDP)に占める輸入の割合がここ2年でいずれも拡大、燃料輸入が占める割合はかつてないほど大きくなっています。


いずれも豊富な人口を抱えている国ですから、原油高による経済への悪影響が心配されます。
(ロイターから引用)


原油マーケットは、単に需給のバランスだけで価格が動くのではなく、ヘッジファンドなどの投機的なお金も大量に入っています。現在世界的に異次元の量的緩和策を打ち出しており、お金が大量に擦られている中で、ある意味そうしたお金の行き先を探している状態でもあります(本来は落ち込んだ消費に回るべきお金のはずですが)。


そうなれば、今の金融経済と同じように、実体経済と乖離しながら一気に価格が動くこともあり得ますので、この辺は注意してみておきましょう。ただ、こういう世界経済の動き、ファンダメンタルズをよく理解することで、投資のチャンスは格段に広がりますので、みなさんにおいても引き続きアンテナ高く、情報収集していってくださいね!
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以上、今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
それでは、次回のアカデミー通信でまたお会いしましょう!
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