GLOBAL INVESTMENT ACADEMY GIA通信 Vol.543
ドル化と中銀の廃止を唱えるアルゼンチンに明るい未来はあるか?
みなさま、こんにちは!
Global Investment Academyの両角です。


「世界には、4つの国しかない。
先進国と発展途上国、
そして日本とアルゼンチンである。」



この言葉は、
1971年にノーベル経済学賞を受賞した
米経済学者サイモン・クズネッツの言葉です。


敗戦後の焼け野原から奇跡の復興を遂げ、
わずか20年で先進国の仲間入りした日本。


1972年には西ドイツを抜いて
世界第二位の経済大国にもなり、


世界的にも日本の躍進は
例外的な存在として捉えられていたそうです。


そしてその日本と逆に
先進国から途上国へ転落した国があります。


今日はそのアルゼンチンについて
少し取り上げてみたいと思います^^
目次
伝統的な政治と経済危機に苦しめ続けてきたアルゼンチン国民
自国通貨が下落の一途をたどる中 米ドルがアルゼンチン経済に浸透
ドル化の運営・維持は潜在的なリスクが山積み
ドル化経済の実現はほぼ無理か・・・ 今後の動きに世界が注目!
伝統的な政治と経済危機に
苦しめ続けてきたアルゼンチン国民
今から3週間ほど前に遡ります。


先月19日に南米アルゼンチンで
行われた大統領選の決選投票で


独立系右派ポピュリスト政党の
自由至上主義を標榜する
ハビエル・ミレイ下院議員が勝利しました。
アルゼンチンといえば、
19世紀以降の世界で唯一、
先進国から脱落した国家として知られています。


戦前のアルゼンチンは
日本よりも圧倒的に豊かであり、
欧米先進国と同等かそれ以上の生活水準でした。
ところが、
欧米各国が戦後さらに
成長ペースを加速させたのとは対照的に、


工業化に遅れた
アルゼンチンの成長は一気に鈍化し、
今では5人に2人が貧困にあえぐほど
貧しい国に落ちぶれてしまいました。
そして今年に入って
年率140%を上回るアルゼンチンの
消費者物価指数に対して不満が爆発。


アルゼンチン国民が伝統的な政治と
経済危機に何度となく苦しめられる中、


経済のドル化や
中央銀行の廃止といった
過激な主張を訴えてきたミレイ氏に
国民の支持が集まる結果となった訳です。


▼ミレイ氏が大統領選で掲げた主な公約や主張

●中央銀行と自国通貨ペソを廃し、ドルを法定通貨に。
●中央省庁を半分に縮小再編して公務員を減らし、補助金や福祉も削減。
●国営企業や学校を民営化し、公共事業も民間に移譲。
●麻薬の合法化と銃規制の大幅な緩和。
●臓器売買市場の創設。



年換算で143%という
急騰しているインフレ率ですが、


強烈なのはパンデミック後には
40%付近だったインフレ率が
143%まで急上昇したという事実です。


年率40%でも十分高いのですが、
それを100%以上押し上げたのは、
現職のフェルナンデス大統領であり、


彼がコロナ禍における大胆な
金融緩和策として無秩序にお金を
ばら撒いたことによってインフレ率は上昇。


GDPが前年比で▲18%も下落する中で
給付金や公共料金の支払い猶予を行い、


モノの生産が激減しているのに
大量の紙幣を景気良くばら撒いたことで、
当たり前のようにモノが足りなくなり、


インフレ上昇に歯止めが
かからなくなったという
今時の小学生でもわかるような
非常にシンプルな構図ですね・・・涙
自国通貨が下落の一途をたどる中
米ドルがアルゼンチン経済に浸透
今回のアルゼンチン大統領選挙が
いつも以上に世界的に注目されたのは、


ミレイ氏が中央銀行を閉鎖し
アルゼンチン・ペソをドルで置き換える


いわゆる「ドル化」といった
極端な主張を繰り返してきたからです。


アルゼンチン/ペソの推移をみると、
ペソは8月に対米ドルに対して
▲18%切り下げられるなど
通貨防衛に迫られていました。


これらの数字は
あくまで公式レートであって、
実勢を反映する非公式のレートは
公式レートを大幅に下回っていますから、


実態はかなり厳しい状態に
あったことが容易に想像できます。
通貨安は一般的に
輸入インフレを通じて
物価高の要因とみられますが、


アルゼンチン国民が
ペソを信用していないこともあり、


不動産や車など高額取引では
価値が安定しているドルが使われています。


その点だけをとらえるなら、
アルゼンチン国民にドル化政策への
抵抗感は少なかったのかもしれませんが、
アルゼンチンのドル化導入は難問山積みです。


ちなみに、
中南米にはこれまでに
ドル化を導入した国として、


パナマ(1903年)、エクアドル(2000年)、
エルサルバドル、グアテマラ(2001年)などがあります。


今日は参考までに
エクアドルのケースを簡単に紹介します。
ドル化の運営・維持は
潜在的なリスクが山積み・・・
エクアドルは
主力のバナナ産業が異常気象の影響で
大打撃を受けた2000年に自国通貨を放棄し、


米ドルを法定通貨とする
ドル化政策を導入しました。


ドル化の流れとしては
当初は自国通貨スクレを米ドルに固定し、
その後スクレを廃止し、法定通貨をドルとしました。


通貨をドルとしたことで
輸入インフレの懸念が後退し、
物価が安定するようになりました。


エクアドルにおけるドル化の
結果をインフレ率からみると、
比較的機能しているように見え、


自国通貨を捨てるという
当時の判断は正しかったようにも思えます。
ただし、ドル化の運営・維持は
上記のエクアドルでのケースは特別として
一般的には潜在的なリスクが
たくさんある点に注意が必要です。


まず、ドル化政策の問題として、
独自の金融政策がほぼ
実施できない点が指摘されています。


例えば、コロナ禍において
米FRBが行った大胆な金融政策によって、
米国経済はどの国よりも早く
景気を回復させた訳ですが、


ドル化の下では
このような政策を
独自では取ることができません。
また、ドル化は、
独自の通貨を発行しないことから、
その国の中央銀行の必要性や
存在意義も問われることになります。


エクアドルは
パナマなどと異なって
中央銀行が今でも健在ですが、


その役割は規制など
管理業務が主となっていますので、
ミレイ氏のいう中央銀行の閉鎖は
慎重に考えて行く必要がありそうです。


また別の懸念点としては、
ドル化を維持するには
ドルの流通量をある程度豊富に
確保し続けることが必要となるはずです。


こうした国は
国際収支の安定化が求められますから、


何らかの理由によって
輸出が不振に陥った場合、
国内では輸入規制がなされることが見込まれ


国民の生活への負担も
大きくなることも懸念されます。
ドル化経済の実現はほぼ無理か・・・
今後の動きに世界が注目!
もう一つ大きな課題は、
アルゼンチンのような大国の場合、


国中に流通させる大量のドルの確保が
相当困難になるかもしれません。


アルゼンチンの経済規模は、
南米2位でエクアドルの5倍以上もあります。


しかも現在アルゼンチンは
外貨準備が枯渇しつつあります。


それに加えて現在
ドル建て金利は極めて高水準ですので、


事実上資本市場への参入は
困難と思われることから、
やはりドル化の実施は
一筋縄にはいかないことでしょう。
まあ、こうして
外から出来ない理由を
グダグダと並べるのは簡単ですが、


現状を何とか打破しようと
大きな志を持って改革を目指している
新しい大統領が出て来ているのですから、


今後一定期間は
温かく見守る必要がありますよね^^


是非とも応援してあげましょう!
・・・・と言いつつも、
個人的にこのミレイ氏について
少し気になる記事を発見しちゃいました。


またこの人も例(=W◯F)の
構成員の一人のようです・・・・。


改めて彼の主張を見てみると、
「中央銀行と通貨ペソの廃止」ですから、


おそらくアルゼンチンは


《グレートリセットの実験国》


となっていくかもしれませんね・・・・汗
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感想・ご意見などございましたら、こちらからお気軽にお寄せください。

以上、今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
それでは、次回のアカデミー通信でまたお会いしましょう!
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